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■ DUCKS TALK バックナンバー
ユージン再訪記
(吉田茂樹-95年 Math)
ロシアの虚像と実像
(桑田泰弘-67年 Journalism)
Pursuit of A Dream
(静谷大輔-98年 Business)
オレゴン〜バリャドリード 学びの旅
(秋山正幸-65年 English)
民族問題として見たアフガン問題
(原百年-93年 Int'l Studies)
夢を追いかけて
オレゴンで自給自足の学校を作る

(堀切幸治-92年 Sociology)
ヨルダン体験
(河村多恵子-94年 Int'l Studies)


 

 

 

 

 

 

ロシアの虚像と実像             桑田泰弘 67年 ジャーナリズム

今のロシアは1960年代の日本

 ここで一般のロシア人の生活について触れてみたいと思います。一般人と申しましてもモスクワと地方では相当な開きがあります。モスクワでのGDP PER Capitaは$6,000でロシア平均$3,200の2倍になります。ロシアの税収の63%はモスクワになり、また外国投資の80%強はモスクワとその近郊になされています。地方のロシア人は冗談で"Moscow is surrounded by Russia."と表現するほどの状況が存在しています。そのモスクワでの収入はロシア企業に勤めて平均月$150〜$200です。何しろ財務副大臣の給料が$300、外務省に入省した初任給は$70です。公務員は押しなべてこの給与レベルにあります。大変低く思われるでしょうが、僕が1965年同志社を卒業した頃鉄鋼、繊維が20、000円で最高の初任給でしたが当時一ドル360円でありドル換算では60ドルに成ります。まさに今のロシアは1960年代の日本といえるでしょう。当然の事ながら日本でもそうで在ったように外資企業に勤めると破格の給料になります初任給が$500マネージャーで$1,500〜2,000が相場に成っています。かっての日本で初任給60ドルの頃日本人は貯蓄を心して生活していましたがロシア人は消費に精を出しています。モスクワは隠れたショッピングの穴場と言えるでしょう。大きなショッピングモールが数多くありブランド商品がところ狭しと売られています。ダイエー、イトーヨーカドーといったクラスのスーパーがどんどん出店されております。日本レストランも250軒を越えました。客の八割はロシア人です。寿司はロシアのニュウリッチの大好物となりました。夏にはほぼ500万人が太陽を求めスペイン、エジプト、キプロス、トルコへ海外旅行に行きます、それも2週間から一月の期間を楽しむのです。冬はオペラ、バレーに時間を過ごし余裕ある人達はスイスへスキーに出かけるのです。
「桑田さん、それ間違いではないですか」と言われそうですが、これがモスクワの実態です。ここでその秘密に付き触れてみたいと思います。 先ず、ロシア人はローンが有りません。住宅はソヴィエト時代に国から与えられているし、教育は高校まで原則的に無料、大学は成績良ければ今も無料です。出来が悪いと授業料はべらぼうに高い。 第二に、ソヴィエト時代にダーチャ(別荘)を貰っています。敷地が2百坪位ありここに果物、野菜、花などを栽培し自給自足のベースが作られています。 第三に、公共料金がほぼ無料に近い料金です。僕は外人専用のアパートに住んでいましたが、水、お湯、電気代が月2百円位の支払いでした。電話もモスクワ市内なら当時は無料でした。その分国際電話はべらぼうな料金でした。つまり、動物性蛋白質さえ確保できれば生活が出来る構造がロシアには有るのです。モスクワを歩いていてまず貧乏人と思われる人に出くわすのは非常に難しい出来事なのです。但し、現在一番困っている人が年金生活者です。かって$400であった年金がドルベースで見ると$20に目減りしているからであります。これら年金者が今も共産党の絶対的支持者層を形成しています。

大統領がウオッカで辞任

 話はガラッと変わりますが、ロシア人の生活からウオッカ無しでは語れません。このウオッカをしてニチボー(大丈夫、心配ない)というロシア独特の楽観主義が生まれて来たのでしょう。激動のロシアの歴史の中で13世紀に渡りボルガの大河のように悠然と流れてきた誰からも侵されていない伝統、それはウオッカを楽しむことです。帝政ロシアの圧政、共産主義時代の息苦しさ、厳しい冬を生き延びる為の庶民の生活の知恵が"ナズダローヴィア"とウオッカを一気に飲み干す習慣に帰結したのでしょう。ロシア駐在にはこのウオッカとの戦いが待ち受けていることご承知おき下さい。ロシアでは倒れるまで飲まない限り友人は出来にくいのです。そしていったん友人に成ったロシア人ほど信頼のおける人間は居ないと思われます。勿論ウオッカによるアルコール依存症はロシアの大きな問題でもあります。過去二人の大統領がこのウオッカで辞任しています。一人はゴルバチェフで彼はウオッカ節酒令を出しアルコール中毒者を少なくしましたがマフィアを増大させ結果的に支持をなくし失脚することと成りました。もう一人はエリチン大統領です。彼はゴルバチェフの節酒令を解き、ウオッカの伝統を復活させましたが自らアル中になって失脚の羽目に成った訳であります。第二の問題は離婚の増加です。社会主義時代からの男女平等意識に加え男のドメスチックヴァイオレンスで離婚率がソヴィエト時代の40%から今や76%と信じられないほどの高率になっています。

これからのロシア

 そろそろ時間も無くなってきました。これからのロシアについてお話しこの講演を終えたいと考えます。ロシアは中国ほどの派手さはありませんが必ずや伸びますし、化けます。現にプーチン大統領はロシア国内はもとより海外でもその業績、行政、外交手腕が高く評価され今やサミット、G8と成っているのであります。やはり冷戦の時代にKGBの一員としてクールに西側社会を見てきたことがロシアの強み、弱みを分析し、強いロシア政策の立案、実行に結びついているのでしょう。かって日本が1960年代に東京オリンピック以降中産階級を拡大し経済力を確立したように、ロシアは今中産階級の拡大に最大限の努力を傾けています。雄大な国土に、ニチボーの楽観主義、人種差別も無い他民族国家、そこにプーチン大統領のリーダーシップ、これからのロシア大いに楽しみが出てくる近隣国であります。

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